オーストラリア 語学留学の競争が激化してきた
日本企業が戦後、はじめて外債を発行したのは昭和三六年である。
ソニーがアメリカでADR(転換社債)を発行したのが第一号だったが、それと相前後して、日立製作所、三菱重工なども外債を発行している。
これは日本経済が戦後の混乱から完全に立ち直り、日本企業が海外でも認知されるようになったことを知実に物語っていた。 それからわずか一年もたたないうちに、キヤノンにも外債発行の話が舞い込んできたのである。
ましたが、実際に外債を発行するなんてことは夢にも考えていませんでした。 経理部員としては恥ずかしい話ですが、外債についての基本的な知識すら心もとなかった。
だから、山一誼券から話があったときも、当社にそれだけの実力があるのかどうか、本当に外債が発行できるのかどうか、正直なところ半信半疑でしたね」(村主)六カ月準備して臨んだADR発行だったがなぜ山一謹券はキヤノンに白羽の矢を立てたのか。 理由はふたつほど考えられる。
ひとつは海外での知名度の問題である。 戦後の日本企業としてはじめて外債を発行した三社を見ればわかるように、当時、外債が発行できる企業といえば、常識的には目立、三菱重工のような大企業か、新進であってもソニーのように、世界的に知名度の高い商品をもつ企業のいずれか、というのが一般的な認識のきれ方だった。
その点、キヤノンにとって幸運だったのは、前年(一九六一年目昭和三六年)一月に発売した自動露出計つきの中級カメラ「キヤノネット」が世界的に大ヒットし、キヤノンの企業ブランドが国際的に高くなっていたことだ。 もうひとつは、証券業界における企業開戦争の副産物と見ることもできる。
ソニー−、日立、三菱らの外債発行における主幹事証券会社は野村謹券だった。 つまり、山一謹券にしてみれば、ライバルに先を越されたかたちであり、今度はなんとしても自分たちが主幹事証券として外債を発行したい。
そうした考えから、おそらく山一誼券自社と取引関係にある企業のなかからいくつかの候補企業を検討し、その結果、キヤノンが選び出されたのであろう。 低利の資金を無担保で調達したいキヤノンと、国際化でライバルに巻き返しを図りたい山一謹券の利害は、「外債を発行する」という一点で一致する。
こうして、外債発行に向けての準備作業ははじまったのである。 たま私が担当することになった。
外債ぐらいは知っていたが、転換社債とかAの外国部に二週間ほど通って勉強することからはじめました」。 もっとも苦労したのは、ADRを発行するための必要書類を整えることだった。
やらなければならない。 しかも、連結決算は過去三年にさかのぼってのもので、アメリカの公認会計士の監査報告がないとだめなのです。
でも、その噴の当社は子会社が一Oぐらいありましたが、連結決算なんかやったことがなかった。 また、アメリカの場合、過去の実績も大事だが、将来の見通しを非常に重視するのです。
そこで今後二年間の事業見通しを書いた発行もくろみ書を添付しなければならない。 をつくるのが事務的にはいちばん大変でしたね」。
当時のキヤノンの子会社は、いずれも企業として未整備で、上場会社はまだ一社もなかった。 アメリカから呼んだ公認会計士と一緒になって各子会社に出向き、倉庫から古い資料を引っ張り出し、泊まりがけで提出書類の作成作業に没頭する。
その作業には六カ月もの時間を費やしたという。 当然である。
当時のキヤノンは、「第一次長期経営計画」がスタートしていたとはいえ、数字的把握はアバウトなもので、SEC向けの提出資料としてははなはだ不備だったからである。 大蔵省の認可をとりつけるまでの苦労も並大抵ではなかった。
大蔵省とすれば、ようやく日本企業が海外で転換社債を発行できるようになったのに、ミソをつけてはいけないという観点から、契約書や提出書類に対するチェック、行政指導は厳しかったという。 東大で同期の人で、私以上によく働いてくれました。
ふたりで一緒に夜の一二時、一時まで契約書の読み合わせをしたこともあります」。 こうした苦労を経て、すべての準備は整い、あとは発行を待つばかり、という段階になって思いがけない事態が起こる。
いざ発行というので、経理部の一行は最後のツメを行なう目的で渡米した。 六三年(昭和三八年)八月のことである。
ニューヨークに着くやいなや、まず今回の社債を引き受けてくれる現地の証券会社や銀行などの挨拶回りをはじめた。 どこでも歓迎ム−ドだったが、東京銀行のニューヨーク支店に行ったときのことだ。
支店長が「時期が悪いですね」と言う。 そのときはどういう意味かわからなかったが、翌日の新聞を見て驚いた。
ケネディ大統領がドル流出防止策として金利平衡税を打ち出したのである。 これによって結局、ADRの発行は中止される。
今度はロンドンで出さないかという話が舞い込んできた。 ドルはアメリカだけにあるわけじゃない。
ヨーロッパにもあるから、そこで転換社債を発行しようということになったのです。 ヨーロッパのほうが発行手続きは簡単だった。
こうしてはじまったキヤノンの海外市場での資金調達は、これ以後、アメリカのADRスイス・フラン建ての転換社債、ドイツ・マルク建ての転換社債など、そのときどきの必要に応じて、あるいは各国の金融市場の状況に合わせてかたちを変えながら、展開されていくのである。 会社じゃありませんから、頼るのは自社の力だけなのです。
転換社債に目をつけたというのには、ふたつの理由があったと思います。 ひとつは自己資本の充実です。
転換社債は、社債の聞は借金ですが、転換すれば自己資本になるわけです。 もうひとつの理由は長期安定資金であるということです。
しかも金利が安い、ということではじまったのです。 手元の資料を見ると、一九六三年(昭和三八年)十二月と、日本企業としてはきわめて早い時期に海外で転換社債を発行したキヤノンだが、六0年代の外債発行は、この最初のロンドンでのケースと、六九年(昭和四四年)九月のニューヨーク市場での九OO万ドル(三二億四OOO万円)の米ドル建て転換社債の二回だけである。
キヤノンの外債による財務戦略が本格化するのは七0年代に入ってからであり、もっと厳密に言えばK来体制がスタートする七七年(昭和五二年)以降だ。 をパンパンやって安い金利の金を借りまくったのです。
むろん円高に対処するという狙いもありました。 集めた金を研究開発費にどんどんつぎ込んでいったわけです。
と同時に、円の変動に備えて、手元流動性を厚くしていったのです」(M手洗富士夫)たしかにK来が財務戦略の「実権を握った」七六年(昭和五一年)以降は、まさに判を押したように一年に一回、必ず海外で転換社債を発行しているのである。 八二年(昭和五七年)以降もハイピッチで海外での転換社債の発行は続く。
を行なっていますが、これはほぼ内部留保と減価償却を加えた、いわゆるキャッシュフローに見合っています。 つまり、設備投資だけなら金は借りなくて済んだのです。
そのほかにこの一0年間で約四五OO億円をエクイティファイナンスで調達している。 この金を何に使ったかというと、投融資に二二OO億円弱、残りの二二OO億円強は円高対策として、円がふらついたりしますから手元流動性の積み増しに使ったのです。
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